裁判所の裁判と交通事故紛争処理センターとの違い その2
1 はじめに
旋回、裁判所での裁判と、交通事故紛争処理センターとの違いをお伝えしました。
この後、裁判とセンターの違いがよくわかる事例がありましたので、お知らせします。
2 問題となった事例
いずれも、人身傷害保険から支払を受けた後、相手方に賠償金の残額を請求した事案です。
最高裁の判例により、人身傷害保険から支払われた金額は、過失相殺による減額分を充当し、充当した残りがあれば、人身傷害保険を支払った保険会社は、充当した残りを事故の相手方に請求できるとされています。
例として、損害合計が100万円、過失割合について、被害者1,相手方9とします。
この場合、相手方に請求しただけでは、過失割合に応じた過失相殺がされることにより、相手方からの支払額は、100万円-10万円(被害者の過失割合が10であることによる減額)=90万円となり、10万円の差額が生じます。
これに対し、人身傷害保険から20万円の支払を受けたのであれば、被害者は、100万円-20万円=80万円を相手方に請求できます。
過失割合による減額分を含めた金額が、人身傷害保険から被害者に支払われているため、被害者と加害者との間では、重ねて過失相殺による減額をすることはできません。
ところが、理由は不明ですが、保険会社は、この場合でも、過失相殺を主張し、80万円の9割の72万円しか支払わないとすることが多いです。
もっとも、これは先にお伝えした最高裁の判例に反する考えです。
このため、裁判所または交通事故紛争処理センターに申立てを行うと、過失相殺の主張は退けられることになります。
そこで、「先に人身傷害保険より支払がされたが、相手方が過失相殺をしない計算方法に同意しなかった事案」を、センターと裁判所のそれぞれに申し立てたところ、次のような違いがありました。
3 センターに申し立てた場合
相手方には弁護士は付かず、過失相殺を主張する保険会社の考えは判例に反することの指摘がされた結果、2回の期日(審理が行われる日)だけで、判例どおりの支払をすることで合意しました。
4 裁判所に申し立てた場合
相手方には弁護士が付きました。
相手方の弁護士は、裁判所に申立てをして事故後の診療録を取り寄せ、症状固定日が後遺障害診断書記載の日よりも前であること、対象となった事故より前の事故での後遺障害が、今回の事故の治療に影響を及ぼしているなどの主張をしたため、2回の期日では終わらず、複数の期日を重ねることになりました。
5 センターと裁判所の違いについて
上記の違いが生じた理由は、相手方に弁護士が付いたことと、裁判所による診療録の取り寄せがされたことです。
相手方の弁護士は、被害者の請求額を減額した分について報酬をもらうという立場上、様々な主張をすることになります。
減額の主張をする前提として、診療録の取り寄せを行ったものです。
一方、センターの場合は、相手方に弁護士が付く必要はなく、診療録の取り寄せについては、裁判所と異なり、そもそも取り寄せの制度そのものがありません。
このため、裁判所よりセンターのほうが、早く結論が出ることが多いです。
ただし、裁判所での慎重な審理が求められる事案については、センターでの対応を断られることがあります。
6 裁判所に申し立てたほうが有利になる場合
今回のケースは、相手方から支払を受ける前に、人身傷害保険から先に支払を受けたケースでした。
しかし、先に支払を受けるのではなく、裁判所での和解や判決が出た後に人身傷害保険に支払を請求すると、過失相殺による減額が生じた分について、支払を受けることができます。
人身傷害保険から先に支払を受けるよりも、裁判の後で支払を受けた方が、人身傷害保険からの支払額が増える場合があります。
後者の場合は「裁判所での和解・判決」が支払の条件であるため、センターではなく裁判所への申立てをすることになります。
7 おわりに
人身傷害保険からの支払を受けることができる場合、支払の請求の仕方により、取得できる金額が異なることがあります。
どのような請求の仕方をすれば有利になるかについては、専門家である弁護士にご相談ください。



