1 過失割合について
自動車どうしの事故の場合、一方が全部の過失割合を負担するという場合は、赤信号無視での交差点進入など、一部の類型に限られています。
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自動車どうしの事故の場合、一方が全部の過失割合を負担するという場合は、赤信号無視での交差点進入など、一部の類型に限られています。
これは、道路交通法において、双方の運転者に対し、安全に対する義務(事故を起こさないようにする義務)が規定されているためです。
例えば、交差点での安全運転義務(36条4項「~できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない」)、車両運転一般に際しての安全運転の義務(70条「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」)などです。
2 過失割合の定め方
これまでの実務や、裁判例の動向を踏まえ、事故の類型ごとに、一定の過失割合が定められています。
例えば、優先道路走行中の車両と、側道から進入しようとした車両とが衝突した場合、側道の車両は優先道路進行車両の走行を妨げてはならないこと(道路交通法36条2項)から、優先道路走行車両の過失割合を10、側道からの車両を90とするのが一般的です。
また、交差点で、双方の車両が対面する状態で、かつ、赤信号の状態で交差点に進入し、直進車と右折車が衝突した場合は、双方が赤信号無視であることから、50:50とされています。
3 自分の過失割合の方が高い場合
⑴ 事故の過失割合が大きい場合、相手方からの賠償 額は、その分、大きく減額されてしまいます。
例えば、上記10:90の事例で、修理費が100万円発生したとしても、過失割合が90とされてしまうと、相手方には10万円しか請求できず、残りの90万円を自己負担しなければなりません。
治療費が100万円であった場合も同様です。
過失割合が大きい側としては、相手からの賠償額が大幅に減額されてしまうことについて、あきらめるしかないのでしょうか。
⑵ 自動車賠償責任保険の利用
ア 自動車賠償責任保険は、慰謝料の算定においては、他の慰謝料の算定基準(裁判上の基準など)よりも低い基準となっていますが、過失相殺がされるのは、過失割合が7割以上の場合であり、かつ、過失相殺による減額の割合も、過失割合をそのまま適用するのではなく、減額をしない場合と比べて、2割から5割の減額にとどめられています。
これは、自動車賠償責任保険が、事故の被害者を保護に重点を置いているためです。
イ 上記の過失割合90の場合では、けがを理由とする保険金の減額は2割にとどまることになりますし、50:50の事例では、過失割合が70より小さいため、減額されません。
ウ このため、ご自身の過失割合が大きい場合は、相手方に請求する前に、自動車賠償責任保険からの支払を受ける方が得策です。
エ ただし、注意しなければならないのは、自動車賠償責任保険による補償は身体に対する損害であり、車両の修理費のような物的損害は対象外であるため、修理費については使用できません。
また、いったん、自ら医療費などを実際に支払った後でないと、同保険に請求することができないので、いったんは、自ら費用を支払う必要があります。
⑶ 車両保険及び人身傷害保険の利用
法律により加入が義務づけられている自動車賠償責任保険と異なり、車両保険及び人身傷害保険については、任意での加入となりますが、これらの保険からの支払であれば、過失相殺による減額がありませんし、相手方が無資力である場合、相手方から支払いを受けられないという事態を避けることができます。
また、人身傷害保険の保険金は、過失相殺による減額分に充当されることとされているので、人身傷害保険からの支払と、相手方からの支払(過失相殺されない部分に対する支払)の両方を受けられるというメリットもあります。
保険料の負担はありますが、もしものときに備えておくことが有益です。
⑷ 過失割合を小さくする
先ほど、事故の類型により過失割合が定められている旨をお伝えしましたが、相手方が法定速度を超過していた場合など、過失割合を修正する事由が定められている場合があります。
このような事由を主張立証することにより、事故の過失割合を小さくし、相手方からの賠償義務額を増やすことができます。
4 終わりに
ご自身の過失割合が大きい場合でも、上記のとおり対応する方法がある場合もあります。
お困りの際は、弁護士法人心・東京法律事務所の弁護士をはじめ、当事務所の弁護士にご相談ください。