収入の減少がない場合の逸失利益について

交通事故

1 はじめに
 自賠責保険により後遺障害が認定されると、後遺障害を理由とする慰謝料のほかに、逸失利益についての賠償が問題となります。
 逸失利益とは「後遺障害により労働能力が低下し、これが原因で収入が減少したことに対する賠償」のことです。
 それでは、無収入の場合や、「収入の減少」がない場合に、逸失利益に対する賠償を請求することができるのでしょうか。

 

2 無収入の場合
 現在無収入であっても、将来収入を得ることが見込まれるのであれば、将来収入を得ることを前提として、逸失利益に対する賠償を請求することができます。
 就労前の若年者(学生など)や、事故に遭ったときは無職だったが、その後の就職が内定していた場合などです。
 世帯での家事労働に従事している場合にも、女子平均賃金を基準とした収入の減少が生じたものとして、逸失利益に対する賠償を請求することができます。
 これに対し、無職の高齢者や、就労(家事労働を含む)していない方が、就労の目処が立っていない状態で事故に遭った場合には、将来収入を得ることが見込まれない、即ち労働能力の低下があっても収入の減少が生じたものとは認められないため、逸失利益に対する賠償請求は認められないことになります。

 

3 減収がない場合
 裁判で最も問題になりやすいのが、後遺障害が認定された後も、収入の減少がない場合に、逸失利益に対する賠償請求をすることができるかという問題です。
 逸失利益は「労働能力の低下により収入が減少したこと」なので、後遺障害による労働能力の低下があっても、収入が減少しなければ、逸失利益は認められないことになります。
 実際、比較的収入が安定している公務員の方が逸失利益を請求したことに対し、これを認めない裁判例が複数あります。
 これに対し、収入の減少が生じない理由が、被害者本人の努力や周囲の援助による場合、今は下生しなくても将来の転職などにより不利益を被ることが予想される場合、将来の昇進に影響がある場合などには、逸失利益に対する賠償請求が認められることがあります
 「現在、減収が生じてない」ことから直ちに逸失利益が発生していないとするのではなく、将来の不利益や、逸失利益が生じていない事情を考慮することとされています。、

 

4 まとめ
 今回は逸失利益に対する賠償請求についてお伝えしましたが、逸失利益に限らず、後遺障害の賠償請求については、いろいろと難しい問題があることが多いです。
 専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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