脊柱の変形の後遺障害について

交通事故

1 はじめに
 事故に遭った後、後遺障害が残ったとして、自賠責保険に対し、後遺障害に対する保険金の支払を申請することができます。
 その多くが、頸椎捻挫・腰椎捻挫のけがを負い、治療を継続したものの痛みが残ったとして、後遺障害の保険金の支払を申請するものです。
 これに比べ、数は少ないですが、比較的多く見られる後遺障害の申請として、脊柱(頸椎・胸椎・腰椎)を骨折するけがを負い、これによる変形が残ったとする申請があります。
 後遺障害として認定される要件は、レントゲン・CTなどの画像検査により、骨の変形が認められることです。
 目に見えない痛みを対象とする頸部捻挫・腰部捻挫の後遺障害と比べると、画像で変形の有無を申請前に確認することができるため、事前に変形があることの確認がされていれば、後遺障害の申請が認められやすいということができます。

 

2 労働能力喪失率について
 脊柱の変形の後遺障害には、後遺障害の申請が認められやすいとの利点がある一方で、頸椎捻挫・腰椎捻挫の後遺障害と異なり、労働能力喪失率について争いになりやすいとの問題点があります。
 脊柱の変形の後遺障害には、脊柱に著しい変形を残すものと、(単に)変形を残すものの2つがあります。
 単なる変形については、検査画像において何らかの変形が認められれば、変形の程度を問わず、後遺障害として認定されます。
 これに対する労働能力喪失率は、自賠責保険の後遺障害等級表では20%とされており、労働能力の5分の1を喪失したものとされています。

 

3 脊柱の変形による実際の影響

 しかしながら、脊柱の変形が実際の労働能力に及ぼす影響は、被害者によって異なるというのが正直なところです。
 変形があったとしてもあまり影響がない方がいらっしゃる一方で、変形による痛み、疲れやすさなどに悩まされる方もいらっしゃいます。
 また、建設業・農作業などの身体に対する負担が大きい仕事なのか、事務作業のような比較的身体に対する負担が少ない仕事なのかによっても、変形(後遺障害)の仕事に対する影響は違ってきます。
 このため、お仕事の内容と、後遺障害がお仕事に及ぼす影響について、それぞれの被害者の実態に合わせ、明らかにした上で、実際の労働能力喪失率がどの程度なのかについて、立証する作業が必要となります。

 

4 減収の有無について
 脊柱の変形があっても、その影響が少ない場合、仕事への支障がなく減収が生じないことが考えられます。
 また、仕事に支障があったとしても、減収しにくい給与体系(身分保障が手厚い公務員の場合など)の場合は、減収が生じないことがあります。
 後遺障害が認定された場合、被害者がお仕事に従事している場合であれば、慰謝料の他に逸失利益を請求できます。
 しかし、逸失利益は「労働能力が喪失(低下)したことにより、労働により得られる収入が減少したことに対する賠償」であるため、減収がない場合には、後遺障害に対する慰謝料の賠償は認められても、逸失利益についての賠償は認められない場合があります。
 被害者が公務員の方の場合、減収がないことを理由に逸失利益の請求を認めないとした裁判例が複数あります。
 ただし、減収がない場合でも、これが被害者本人の努力や周囲の手助けによる場合は、逸失利益を認めた裁判の例もあります。

 

5 まとめ
 今回は脊柱の変形による後遺障害の賠償請求についてお伝えしましたが、脊柱の変形に限らず、後遺障害の賠償請求については、いろいろと難しい問題があることが多いです。
 専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

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