代車特約について
1 はじめに
自動車保険には、本来の保険である賠償責任保険※のほかに、様々な特約があります。
今回は、代車特約について説明します。
※ 賠償責任保険
事故の相手方より損害賠償の請求がされた際、保険会社が被保険者(保険契約に基づき、保険から保険金の支払を受けることができる者)に代わり、または被保険者が相手方に賠償金を支払ったあと、当該賠償額を支払ってくれる保険をいいます。
相手方の車両が破損したときの修理費、ケガをしたときの治療費などが保険会社より支払われます。
2 代車特約とは
事故後、被害者が車両の修理期間または新たな車両を買い替えるまでの期間の代車費用について、被害者が契約する保険会社より支払われる保険です。
多くの契約では、日額〇〇円×最長30日までなどと、日額と支払可能期間が定められています。
3 代車特約を使用することのメリット
事故により発生した損害について、御自身の保険から支払を受けることに対し「自分の保険を使いたくない」「相手方から支払うべきだ」などとして、否定的な考えを持つ方が少なからず見受けられます。
しかし、相手方からではなく、被害者自身の保険から支払を受けることについて、以下のようなメリットがあります。
また、一般的には、特約の使用のみでは保険料の値上がりはありません。
⑴ 過失相殺の影響がないこと
交差点での事故のように、双方に過失割合が発生する事故の場合、相手方から代車費用の支払いを受ける場合には、本来の代車費用から過失割合分を減額した金額の支払いとなります。
例えば、被害者の過失割合が1、相手方9、被害者に発生した代車費用が10万円の場合、相手方からの賠償額は、1割減の9万円となり、減額された1万円について被害者が負担することになります。
これに対し、代車費用特約より支払を受ける場合には、保険契約において「被害者が重過失の場合は保険金を支払わない」などの特約がある場合を除き、被害者の過失割合の程度にかかわらず、過失相殺されていない所定の金額が支払われます。
⑵ 相手方(相手方の保険会社)との紛争を避けることができること
代車費用については、代車の使用期間を巡り、賠償の対象となるのはどの期間までかが争いとなることがあります。
例えば、諸般の事情により、修理の開始が遅れた場合、開始が遅れた期間の代車費用について、相手方が賠償を拒むことがあります。
このような場合、代車費用特約があれば、相手方が支払を拒んでいる分について、代車費用特約から支払を受けることで、紛争や被害者の損害を回避することができます。
4 おわりに
必要な特約を備え、活用することで、事故の被害を回避したり軽減することができる場合があります。
専門家である弁護士にご相談ください。