裁判で時間がかかる理由

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1 はじめに
 事故の賠償金を取得するまでの、示談(任意の話し合い)による解決と、裁判による解決とを比較した場合、裁判のほうが時間がかかると一般的に言われています。
 その理由について、お伝えします。
  
2 手続が厳格であること
 示談の場合、どのような書類を提出するかについて、一般的な決まりはありません。
 決まりがないからといって、何でもありというわけではなく、被害者側の請求や主張が、相手方関係者(相手方が契約している保険会社を含む)に正しく伝わらなければなりませんが、提出すべき書類の種類や、提出期限が定められているものではありません。
 これに対し、裁判では、提出すべき書類が定められています。
 例えば、訴え提起をする際には、訴状、証拠書類のほかに、所定の印紙・切手の添付や、被告の人数分の書類(訴状と証拠書類の写し)を作成して提出しなければなりません。
 また、請求の内容ごとに、最低限明らかにしなければならない事実が定められており、必要な事実が漏れていると、請求が認められないということになってしまいます。

 

3 裁判官が関与すること及び期日が定められていること
 ⑴ 裁判官の関与
  裁判の手続は、事故の被害者と加害者(加害者が契約する保険会社)による話し合いがうまくいかない時に開始されます。
  話し合いが順調に進むのであれば、あえて時間や費用をかけてまで裁判をする必要はないためです。
  裁判では、裁判官が最終的な判断を行いますが、その前提として、相手方のみならず、裁判官にも必要な内容を伝え、理解してもらう必要があります。
  一般的に、裁判官は多忙であり、複数の事件を担当しているため、裁判官が事件の内容を把握するまでに、時間がかかってしまうことがあり、結果として、解決までの時間を要することがあります。


 ⑵ 期日が定められていること
  示談の場合、双方が各自の判断に応じて必要な書類を相手方に送り、その返答を待つこととなり、送る時期や回答の時期について決まった期限はないのが通常です。
  これに対し、裁判では、手続を行う日(期日)が定められ、期日以外の日において手続を進めることはありません。
  期日が定められることにより、事件の進行が遅れてしまうことがあります。

 

4 不服申立てができること
 裁判所が出した判決に対しては、最終審である最高裁の判決を除き、不服を申し立てることができます。
 不服に対する審査は、これまでとは別の裁判官が、最初から検討し、判断することになります。
 いわば、これまで他の裁判官が行っていた検討が、いったんリセットされるのと同じですから、その分、最終的な結論が出るまでに時間がかかることになります。

 

5 裁判の利点
 これまで、裁判によった場合に時間がかかる理由についてのみお伝えしましたが、裁判には、示談にはない利点があります。
 それは、裁判の判断に拘束力・強制力があり、公的な機関が一定の結論(事故による損害賠償請求の場合は、損害賠償金支払の要否と、賠償金を支払うべきとされた場合の賠償金の金額)を示すことにより、最終的な解決が図られる、ということです。
 手続が厳格であるのは、その判断が強制力・拘束力を有するが故に、慎重に判断するためのしくみとして、厳格な手続とされたものです。

 

6 おわりに
 解決の早さという点では、裁判によらずに示談にて解決するに越したことはありません。
 しかし、事案によっては、裁判によらざるを得ないこともありますので、専門家である弁護士にご相談ください。

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